成瀬は信じた道を行く

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成瀬は信じた道を行く

序章:成瀬は信じた道をいく――物語のはじまり

本屋大賞を受賞した前作『成瀬は天下を取りにいく』の続編である『成瀬は信じた道をいく』は、主人公・成瀬あかりのまっすぐな生き方が、周囲の人々にどのような影響を与えていくのかを描いた作品です。圧倒的な読みやすさとテンポの良さが特徴で、気づくと最後まで一気に読んでしまうほど引き込まれます。今回は成瀬本人だけでなく、彼女に関わる人々――憧れる小学生、心配性の父、そして巻き込まれていくクレーマーなど、多彩な登場人物の視点から「自分を信じて生きること」の意味が丁寧に描かれています。

第1章 憧れと戸惑い――みらいが見つけた“信じる力”

【夏祭りの出会いと憧れ】

ときめき小学校の北川みらいは、「ときめき夏祭り」で財布をなくしてしまいます。困っていた彼女に声をかけ、優しく対応してくれたのが、司会を務めていたゼゼカラこと成瀬あかりと島崎みゆきでした。落ち着いて行動する成瀬の姿に強く心を惹かれたみらいは、ゼゼカラに深い興味を持ち、学校のプレゼンテーションで彼女たちを紹介しようと決意します。純粋な憧れと尊敬が、みらいの中で少しずつ芽生えていきます。

【共感と葛藤、そして気づき】

インタビューを進めるうちに、みらいは友達との熱量の違いに戸惑いを覚えます。自分だけが真剣すぎるのではと悩み、孤立感を抱いてしまうのです。そんなとき、島崎が語った「小学生のころの成瀬」の話を聞き、みらいの心は救われます。完璧に見える成瀬も迷いや不安を経験してきたと知り、彼女の強さの本質を理解します。みらいは人との違いを受け入れ、自分の気持ちを信じて進む勇気を手に入れるのです。

第1章を読んで感じたこと

この章、みらいの気持ちがすごく伝わってきたな。好きなことに真っすぐ向き合うほど、周りとの温度差に悩む感じ、すごくリアルだった。

分かる。成瀬に憧れる気持ちは純粋なのに、同じ気持ちを共有できないもどかしさが切なかったね。

でも島崎の話を聞いて、みらいが前を向けるようになるところが良かった。

うん。完璧に見える成瀬にも迷いや不安があったと知って、みらいが自分を信じる強さを見つけた瞬間だったと思う。

第2章 心配性な父・成瀬慶彦の葛藤

心配が止まらない父・成瀬慶彦

ここでは、成瀬あかりの父・成瀬慶彦の姿が描かれます。行動力抜群の娘・あかりに対し、父はとにかく心配性で頼りない存在です。京都大学の入試の日にも「不安だから」と付き添い、娘を見守りますが、あかりが同じ受験生であるユーチューバーを家に招こうとするのを止められず、ただ呆然とするばかり。そんな父の姿に、母は「あなたがついていながら!」と無言で責める視線を送ります。どこか滑稽でありながらも、娘を思う父の愛情がにじむ場面です。

頼りなさの中にある優しさ

家庭内では少し立場の弱い慶彦ですが、娘への心配は愛情の裏返しです。突拍子もない行動を取るあかりに振り回されながらも、彼女を信じ、見守ることしかできない不器用な父の姿が描かれています。強烈な個性を持つ家族の中で、彼の存在はどこか温かく、人間味にあふれています。読者はそんな慶彦の姿に共感し、「心配することもまた、愛の形なのだ」と感じました。

第2章を読んで感じたこと

成瀬の父・慶彦の心配性ぶりが面白くもあり、どこか共感できたな。娘が何をしても心配で、止められない姿が可笑しいけど可愛かった。

うん。京都大学の入試の日に付き添うのも、ユーチューバーを家に招こうとした娘を止められないのも、愛情の表れだよね。

母の無言の視線に戸惑うところも、人間らしくてリアルだと思った。

そうだね。強烈な個性のあかりに振り回されながらも、信じて見守る父の不器用さが温かく感じられた章だった。

第3章 クレーマー呉間と言葉に宿る洞察力

クレーマー呉間の意外な才能

成瀬あかりは、自宅近くのスーパーでアルバイトをする中、主婦の呉間言実に注目します。彼女は些細なことでクレームを入れる“クレーマー”ですが、家に帰ると反省する一面も持っています。成瀬は、注意深く観察し物事を追求できる呉間の性格が、近頃多発する万引き犯の発見に役立つと考えました。当初は協力を断る呉間ですが、その洞察力は成瀬にとって見逃せない存在でした。

信頼と役割で変わる心

次第に呉間は、万引き犯を発見して成瀬に知らせることで、実際に事件の解決に貢献するようになります。他のクレームが感情的で曖昧な中、呉間のクレームは状況説明や問題点が明確で、成瀬も一目置く存在です。評価されることで呉間自身も少し心が救われ、自分の役割や価値を実感します。誰にでも可能性があることを見抜く成瀬の洞察力が光る、心温まる章となっています。

第3章を読んで感じたこと

呉間さんって最初はただのクレーマーかと思ったけど、意外と観察力があってすごいなと思った。

うん。感情任せで騒ぐ人とは違って、状況を整理して問題点を指摘できるところが頼もしいよね。

成瀬がそんな才能を見抜いて、万引き犯の発見に役立てるところもさすがだと思った。

ただ怒るだけじゃなくて、役割を与えられることで呉間さん自身も自信がつくのがいいよね。

人の長所を見抜いて引き出すって、大人でも難しいことだけど、成瀬は自然にやってのけるんだなって感じた。

第4章 篠原かれん――家族の期待と自分の生き方

三代目観光大使としての重圧

篠原かれんは、祖母や母も務めたびわ湖大津観光大使のサラブレッドです。徹底した英才教育や見合いの準備を経て、観光大使の座を目指します。その甲斐あって、かれんは成瀬あかりと共に大津観光大使に選ばれます。しかし、任務を始めると自分のやりたいことが見えなくなり、母や祖母が次代のために見合い相手まで選ぼうとする現実に、窮屈さを感じるようになります。

自分の道を見つける挑戦

かれんは家庭や周囲の期待に縛られないため、「観光大使-1グランプリ近畿ブロック」に挑戦します。予選通過は叶わなかったものの「審査員特別賞」を受賞し、似た大使たちの中で自分が特別だと認められる喜びを味わいます。信じた道を進む成瀬との出会いが、かれんに自分らしい生き方を模索する勇気を与え、家庭の重圧と自分の意思の間で揺れる彼女の姿が印象的に描かれています。

第4章を読んで感じたこと

かれんさんって、家族の期待に縛られすぎて、自分のやりたいことが見えなくなっていたんだな。

そうだね。三代続く観光大使の重圧は、任期が1年でも相当なものだと思う。

でも、グランプリに挑戦して特別賞をもらえたことで、自分の価値を実感できたのが良かったね。

成瀬と出会ったことで、自分の生き方をカスタマイズする勇気ももらえた感じだよね。

家族や周囲の期待と自分の意思の間で悩む姿がリアルで、読んでいて応援したくなった章だったな。

第5章 探さないでください――夢を叶える年越しの夜

消えた成瀬と大晦日の捜索隊

大晦日の朝、成瀬あかりが「探さないでください」と書き置きを残して姿を消します。母は「そのうち帰ってくるでしょ」と気に留めませんが、父は心配のあまり「自殺でもしたらどうしよう」と動揺します。相方の島崎みゆきは不安を感じ、父とともに捜索に出発。途中で北川みらいと篠原かれんが合流し、大捜索隊が結成されます。成瀬がスタンプラリーをしているという情報を得て名古屋へ向かいますが、惜しくも会えずに帰路につくことになります。

夢を叶える年越しの夜

帰りの車中で、みゆきのもとに成瀬の母から「今、あかりちゃんが家に来たの」と連絡が入り、皆が胸をなでおろします。みゆきは成瀬と会えないまま成瀬家で年を越しますが、テレビに映るNHK紅白の「けん玉ギネス記録チャレンジ」で、滋賀県代表として挑戦する成瀬の姿を目にします。無事成功を収め、彼女はまた一つ夢を叶えるのでした。「いくつか発言して、何個か叶えばいい」――その言葉通りに。

最後の章、成瀬らしさが全部詰まってたね。突然いなくなるのに、実は夢を叶えるために行動してるっていう。

そうなんだよね。周りは振り回されるけど、最終的には誰も責められないんだよね。だって成瀬はいつも本気だから。

NHKのけん玉チャレンジに出てたのもすごいけど、誰にも言っちゃいけないのを守りきるのもすごいよね。

夢は何個も発言して、何個か叶えばいいって言葉がまた成瀬らしい。どんな形でも前に進む強さがあるよね。

読んでて、やっぱり自分もこんなふうに素直に夢を追いたいなって思った。

学びと成長――自分を信じて進む力

信じた道を貫く力

『成瀬は信じた道をいく』は、「自分を信じて行動すること」の大切さを描いた物語です。成瀬あかりは特別な才能を持つわけではなく、ただ自分の信念を曲げずに前へ進む力を持っています。その姿が、小学生のみらいには「憧れを行動に変える勇気」を、心配性な父には「見守る愛の形」を、そしてクレーマーの呉間には「自分の価値を見つめ直す喜び」を与えました。また、篠原かれんにとっては「他人の期待ではなく、自分の人生を選ぶ覚悟」を生むきっかけとなります。

挑戦が導く成長

最終章で描かれる、成瀬の“NHKで夢を叶える姿”は、彼女の生き方の集大成です。誰にも告げずに挑戦を続け、「いくつか発言して、何個か叶えばいい」と語る彼女の姿勢は、完璧よりも行動を重視する強さを象徴しています。成瀬の生き方は、失敗を恐れず挑戦する勇気こそが人を成長させるのだと教えてくれます。信じた道を進むこと――それが、読者へ贈られる最大の学びなのだと思います。

最後に

『成瀬は信じた道をいく』は、どんな状況でも自分を信じて前へ進むことの尊さを描いた物語です。成瀬あかりは完璧ではないけれど、信念を持ち、自分のペースで夢を叶えていく。その姿は読者の背中を優しく押します。彼女に影響を受けた人々が、自分らしく生きる力を得ていく姿も感動的で、成瀬の生き方は「正解」よりも「信じた道」を進む勇気の大切さを教えてくれます。

あなたなら、どんな道を選び、進んでいきますか?

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