舟を編む～読書感想～

こんにちわ。ゆたかです。

今回は「舟を編む」を読んでいくよ。

2012年の本屋大賞に選ばれた作品ね。確か、辞書作りのお話だったよね。

辞書に人生を捧げた人たちの情熱を描いた作品で言葉の奥深さを感じることが出来るよ。

新しいことに挑戦する、根気強く続ける意義について考えさせられる作品だと思うわ。

それでは、「舟を編む」を読んでみよう。

第１章　「大渡海」を作る

「大渡海」は、玄武書房が新たに編纂する大型国語辞典の名称です。この本は、この辞典を完成させるために言葉に魅了された人々とそれを陰ながら支える人たちが数々の困難を乗り越えていく物語です。主人公の馬締光也は、言葉に対する深い愛情と探究心を持つ人物で、「大渡海」の編纂に情熱を注ぎます。この辞典の名には「大きな海を渡る」という意味が込められており、言葉の海を渡り、人と人をつなぐ橋となることが期待されています。辞書編集の地道な作業を通して、言葉の力や人間関係の深まりが描かれ、「大渡海」は単なる辞典以上の存在として物語に深い意義を与えています。

小学生のころ、何度か辞書を引いたことあるけど、普段は全然使わないよね。

最近では、インターネットですぐに検索できるから、どんどん使う頻度が減ってるんじゃないかな？

そんな辞書だけど、他の本つくりとどう違うのかな？実際に見てみよう！

＊辞書作りの過程

1. 企画立案：

新しい辞書（「大渡海」）のコンセプトを決定する。

2. 言葉の選定：

載せるべき言葉を収集し、必要な語彙を選ぶ。

3. 用例収集：

実際に言葉が使われている例（用例）を集める。

4. 定義作成：

正確で分かりやすい意味を文章で表現する。

5. 校正・編集：

誤字脱字や表記の揺れ、内容の整合性をチェックし修正する。

6. 組版・印刷：

辞書の形に整え、製本・印刷する。

こんなに作業があるのね。

本の中では、テレビで新しい言葉を聞くたびに用例採集カードを作っていたよ。

時代によって言葉の意味や使い方も変わるから全部チェックするだけでも大変ね。

辞典を完成させるのはすごく根気がいるんだね。だから、次の人たちがいなかったら辞典は完成しなかったんじゃないかな？

第２章　言葉に見いだされた人々

ここでは言葉に魅了された人々が登場します。そのうちの1人が松本先生です。松本先生は「大渡海」の発起人であり、辞典の完成が夢でした。そして、同じく辞書に人生を捧げた男、荒木が定年を迎えるという事で、それは困難な道だと悟っていました。しかし、荒木は諦めません。自分の後継者を見つける事を決意します。そこで同じく辞書編集部の西岡から有益な情報を聞きつけ馬締をスカウトするのです。この時、荒木は馬締にいくつか質問をします。例えば、「しま」を何と説明する？馬締は「ストライプ、アイランド、地名の志摩、よこしま、さかしま、仏教用語の四魔」と連想する言葉の多さに驚きました。それもそのはず、馬締は毎日本屋に立ち寄っては本を買い、住んでいるアパートの一階部分は本で埋め尽くされる程でした。そんな馬締ですが、いつも本ばかり読んでいたため、人からは敬遠されて生きていました。しかし、荒木から辞書編集という才能を見出されて馬締は輝いていくのです。

松本先生と荒木がいなければ、この話は始まらなかったんだね。

定年を迎えるというのに、かなりのエネルギーよね。それに応えた馬締もすごいね。

馬締も初めて才能を認められて嬉しかったんじゃないかな。

でも、馬締は言葉に対しては有能だけど、人間関係はトンチンカンなのよね。

そこで次に出てくる人達が辞書作りを支えていくことになるよ。

第３章　辞書作りを陰から支える人々

辞書編集部には荒木の他に西岡と佐々木がいました。佐々木は愛想はないながらも実務能力に長けた女性で子育てが一段落した今は契約社員として働いています。西岡は、辞書編集部の若手社員で、明るく社交的な性格を持ち、対人関係や営業的な業務に優れています。その一方で、何かに情熱を燃やすということが苦手で馬締のように素直で熱中できる人に心では嫉妬する場面もあります。以前から辞書作りの熱量に距離を感じていたものの、辞書を「読む人」の立場から捉えるという、馬締たちとは異なる視点を持ち、その視点は辞書をより多くの人に届けるうえで欠かせないものでした。その後、宣伝広告部へ異動してからも、『大渡海』の広報活動に尽力し、宣伝の現場と編集部の橋渡し役として活躍していきます。西岡が宣伝広告部に異動になった13年後、岸辺みどりは、辞書編集部に配属されます。彼女は女性ファッション誌の編集部から異動となり、当初は地味で果ての見えない作業に戸惑いを感じていました。しかし、馬締や同僚たちの言葉への情熱に触れ、次第に辞書作りの意義に気づいていきます。彼女は用例採集や語釈の確認、無数の校正に地道に取り組み、めくるだけでどの辞書か当てれるほど、体に染み込ませていきました。やがて用紙選びという大役を任され、印刷会社の宮本と共に、読者にとって最適な一枚を求めて試行錯誤を重ねます。手触り、透け具合、保存性などすべてに納得のいく紙が完成していくのです。

大人になると無難な方に考えがちだけど、馬締達みたいに何かに集中できるのは羨ましく感じるなぁ。

人付き合いが苦手な馬締も西岡がその部分をサポートしたから無事に刊行できたのね。

岸辺の成長ストーリーもよかったなぁ。

最初はマイナスなイメージから入ったのに、今では辞書編集部のエース的存在だものね。

何にでも没頭できる人は強いね。

それぞれが自分の役割を果たして辞書が出来ていくのね。

でも辞書作りは一筋縄ではいかなかったんだよね。次は完成までの道のりを追ってみるよ。

第４章　完成までの道のり

辞書『大渡海』の完成までの道のりは、困難の連続でした。辞書編集部は、時間と労力を惜しまぬ作業を続けますが、出版社内部では業績重視の風潮が強まり、編集部の存続が危ぶまれるなど、会社からの横槍に苦しみます。そんな中、辞書作りも終盤まで差し迫ると荒木が収録する言葉が抜けている事に気がつきます。収録語の見直し作業には約1ヶ月もの泊まり込み作業を要しましたが、アルバイト50人を含めた辞書編集に携わる人々は決して諦めず、激務をやり遂げるのです。こうして。『大渡海』は完成に至りました。しかし、発起人である松本先生は完成間近で亡くなってしまいます。馬締は自分の力不足を悔やみますが、先生の妻から「あの人のすべてが詰まった『大渡海』がこうして形になって嬉しい」と感謝の言葉を伝えられます。生前、松本先生は辞書について「海外の辞典は公的機関が主導し、国の維新をかけて作成されるものもあるが、日本の辞典は出版社が作成するためお金がない。しかし、公金がないからこそ政府に口出しされることなく自由に辞書を編むことができる。言葉を使う辞書とは、生きた思いを伝えるツールであり、権威づけと、支配の道具になってはならない。」と馬締に伝えており、言葉の持つ力と奥深さを考えるのでした。そして、そんな辞書を編むことに誇りを持つのです。完成祝賀パーティーの後は辞書の改訂作業に入ります。辞書の作業に終わりはなく、言葉に魅了された人々は今日もまた辞書を編みます。新しい言葉が生まれる限り。